「キン肉マン第80巻」ゆでたまご著/集英社
書評対象としては微妙だが、今回紹介するのは、もしかしてその存在を知らなかった人々も案外多いのでは、と感じたからだ。私は今年9月に知った。「キン肉マン」は1987年、「王位争奪編」で主人公・キン肉スグルがキン肉星の王座を得るところで、終了し、コミックスは36巻まで発刊された。
その後は週刊プレイボーイでスグルの息子・万太郎が主人公の「キン肉マンⅡ世」が連載され、2世世代の闘いが描かれた。「Ⅱ世」だが、オリジナルとは異なるテイストや、慣れない形状の超人が多く、「もうオレたちのキン肉マンではない」とすぐに読むのはやめた。
恐らく作者や編集者もそうした「キン肉マン離れ」は感じていたのだろう。2011年に「週プレNEWS」で純然たる「キン肉マン」の続編の連載が開始され、今に至る。49歳の私が小中学生だった頃に熱狂した懐かしの超人が当時の姿のまま登場するが、「Ⅱ世」とは段違いに熱狂してしまった。その理由は以下にある。
①テリーマン・アシュラマン・ラーメンマンなど主力「正義超人」の再活躍②かつて敵対した「悪魔超人」「悪魔騎士」「完璧超人」らがキン肉マン側として登場し、頼もしい姿を見せてくれる。「敵に回すと恐ろしいが、味方にすると頼もしい」というヤツである③負けるのは分かっているものの、弱小正義超人(カナディアンマン・ベンキマン・ティーパックマンら)がじっくりと試合をし、意外な強さを見せる④過去の恩讐を超えて協力するさま⑤過去の「キン肉マン」の伏線の回収(というか、ゆでたまご先生は毎回行き当たりばったりで設定をするのだが……)。
こうした魅力があったうえで、バトル漫画にありがちな「敵のインフレ」「戦った相手が改心し、味方になる」というベタな展開になっていく。敵のインフレについては、「完璧・無量大数軍」「完璧超人始祖」「オメガ・ケンタウリの六鎗客」「超神」など、次々とより強い相手が出てくる。
もともと同作は「死んだはずの超人がなぜか生きていた」など矛盾が多かったが、続編では、そんな矛盾から逃れるためか、試合中に敵が設定の説明を長々とする場面が登場し、若干そこが冗長ではある。 ★★半(選者・中川淳一郎)