「旅するピアノ」伊藤正治著
コロナ禍で、ピアニストの室井千晴が所属する楽団は解散することになった。
38歳で職を失い、途方に暮れていると、トロンボーン奏者の和田が、ピアノの運搬アルバイトをやらないかと声をかけた。太平洋戦争下、艦砲射撃に遭ったアップライトピアノを釜石まで運ぶ仕事だ。予算がないので、250キロのピアノを楽団の軽トラで運ぶことに。翌朝、和田と2人で出発したが、途中で和田に電話がかかってきた。取り立て屋が家に押し入ってきたことで和田は急きょ自宅に戻る。千晴が苦手なマニュアル車を運転していると、途中でエンジンが止まってしまった。
女性ピアニストと統合失調症を抱えた中年の男性が繰り広げるロードノベル。
(言視舎 1980円)