「ヤクザときどきピアノ」鈴木智彦著
教会の日曜学校で、シスターがピアノで賛美歌の伴奏をするのが羨ましかった。白鍵が神の、黒鍵が悪魔の歌を弾くための音階だと思っていた。礼拝堂に忍び込んだらピアノには鍵がかけられていて、その夜、体中に発疹が出た。
原稿執筆のための缶詰め生活が終わり、映画を見に行った。「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」でABBAの「ダンシング・クイーン」が流れたとたん、涙があふれ出た。――ピアノでこの曲を弾きたい。ネットでピアノ教室を検索し、2日後、見学に行った教室でレイコ先生と出会った。
「『ダンシング・クイーン』を弾けますか?」「練習すれば弾けない曲などありません」
ヤクザの潜入ルポライター52歳の挑戦。
(CCCメディアハウス 1500円+税)