今だからこそ見えてきたコロナ感染症の真実本
「変異ウイルスとの闘い」黒木登志夫著
とうとう第8波の流行がやってきた。これまで自粛とマスクとワクチンで立ち向かってきたが、一体新型コロナウイルス感染症とは何だったのか。今回は、今だからこそ改めて考えてみたい新型コロナ本5冊をご紹介する。
2020年に「新型コロナの科学-パンデミック、そして共生の未来へ」を書いた著者による続編。今回は、変異しながら感染拡大する新型コロナの出口戦略を探った書だ。
これまでの経験から①同じ変異ウイルスが繰り返されることはなかった②新しいウイルスは前の波を乗り越えて増えた③波が進むたび感染力が増大④波が進むたびに致死率は減った⑤重症化・致死率は60歳を境に大きく変わる──-の5点がわかった。
今後は、徐々に収束に向かう「終わりの始まり」、致死率の弱いウイルスの波が年数回押し寄せる「始まりの終わり」、感染力と致死率が共に高い変異が繰り返される「終わりなき始まり」の3つのシナリオが考えられるらしい。ウイルスに科学が勝利できるのか、リアルタイムの攻防が本書で確認できる。 (中央公論新社 1034円)
「新型コロナワクチン 誰も言えなかった『真実』」鳥集徹著
みんながワクチンを打つことで、コロナ禍が終わる。そんな説明を信じてワクチン接種を受けた人の間に、いま動揺が広がっている。ワクチン接種後のブレークスルー感染や長引く後遺症や死亡例などが明らかになり、引き続きワクチンを打ち続けるべきなのか、もう一度考えたいと立ち止まる人の声が無視できなくなってきたからだ。
本書は、25年近く医療現場を取材し、「新薬の罠」で日本医学ジャーナリスト協会賞大賞を受賞した著者による新型コロナワクチンの真実を追求した書。現場の医師や研究者の声を紹介しながらデータを検証していく。
著者は、ワクチンに懐疑的な言論に「反ワク」というレッテルを貼られる現状を憂慮しつつ、新型コロナワクチンが歴史上最大の薬害事件になることは間違いないと断言している。 (宝島社 990円)
「コロナとWHO」笹沢教一著
新型コロナウイルスに対して、WHOをはじめとする国際保健体制は有効な手だてを打てたのか。本書は、記録に基づき、それら機関のパンデミックへの対処を確認しながら、その背景や課題について考察したもの。武漢でのクラスター発生の初動時から時系列を追って検証していく。
WHOが2020年1月1、2日に中国当局に原因不明の肺炎クラスターの情報提供を要請し、回答を得たのが3日。20日に中国が「人から人への感染」を明言してもWHOはまだそれを認めず、パンデミック宣言を先送りにしていく様子が描かれる。
コロナ禍にテレビ会議方式で行われた世界保健総会の問題点やテドロス体制下でウイルス起源の調査団が中国に入国できなかったことにも言及。新型コロナがあぶり出した国際保健体制の現状がよくわかる。 (集英社 968円)
「コロナ収束のための処方箋」長崎大学バイオハザード予防研究会、医療ガバナンス研究所編著、上昌広監修
どうしたらコロナ禍から抜け出せるのか。本書は、新型コロナウイルスは無症状感染者の呼気から出されるエアロゾルを周囲の人が吸い込む「エアロゾル感染」が問題だといち早く指摘した著者らが、医療・人権・法律・経済面から収束の方策を提言したもの。
収束の方法として①PCR検査の無料化と広範囲での徹底的な実施②教育現場や飲食・乗り物・宿泊施設などでの抗原検査の活用③水際対策の徹底④専門病院の建設⑤マスク着用⑥治療薬の活用⑦ウイルスの不活性化や減少に効果がある飲食物の活用⑧換気や空気浄化⑨限界を理解した上でのワクチンの活用などを提案。
感染拡大を防止するには無症状感染者の把握が最も大切であり、逆にワクチンパスポートは感染拡大の要因にもなりかねないと指摘している。 (緑風出版 2200円)
「実践医療現場の行動経済学」大竹文雄、平井啓編著
「いつまでも自粛なんてうんざり」など、コロナ禍において流行を防ぐための手だてに対して不満が寄せられ、なかなか対策がとれないことは多い。
本書では、このような医療現場における問題点に対して行動経済学の立場から対策を提言。特に第4章では「新型コロナウイルス感染症対策の行動経済学」と題して、その対策を解説している。
そのポイントとして①持続的な行動変容の必要性②感染症の促進には利他的なメッセージが効果的③高齢者ワクチン接種促進には社会的影響、メッセージが効果的④感染対策やワクチン接種意思は状況によって大きく変動する可能性があるため、効果的なメッセージを検証しながら使っていくことを提唱。
その他、手指消毒やメンタルヘルスケアなどの具体的な働きかけの参考例も掲載されている。 (東洋経済新報社 2640円)