もう頑張らない!ラクに生きるコツが分かる本特集

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「真説 老子」高橋健太郎著

 人間関係や、時間に追われ続ける、生きることへのむなしさなど、尽きることのない悩み。そんな果てしない人生の悩みも、ひと工夫で上手に処理できてしまうとしたらどんなにいいだろう。人生を楽にするテクニック満載の5冊を紹介。



 現代の日本では、道徳の意義が説かれた哲学書として読まれている「老子」。

 しかし、実際に書かれているのは「いかに自分の身を安全圏に置きながら物事を成し遂げるか」ということのための理論なのだ。かの毛沢東も戦略書として愛読していた。

「老子」の核である「道」は「万物を帰す」働きをする力。これを現代風に換言すると、ゼロの地点に戻す働き、つまり「競争社会で得たものはいずれ失われる」ということ。争わない世界に住むことが「道」に従った生き方であると説く。

 争わずして人々を動かすためには「無為」、つまりあからさまな強制力を用いないことが必要。「たばこの煙はあなただけでなく、周囲の人の健康を害する可能性があります」という文句は、強制ではなく情報提供という形で禁煙を促す身近な「無為」の実践例である。

 この考え方は、営業マンが「選んでほしくないプランAを否定するのではなく、おすすめのプランB、Cを提案する」というような方法で応用できるという。

「老子」が説く権謀術数を現代に蘇らせるリアリズムの書。

(草思社 1760円)

「開き直る禅思考」枡野俊明著

 自分のミスで迷惑をかけたり、努力したのに挫折するなど、多くの人はなるべく失敗は避けたいと思うものだが、禅僧でもある著者によると、実は失敗はとらえ方ひとつで人生の大きな糧になるという。

 それには、失敗したときに自分や他人を責めるのではなく、「この状況をどうリカバーしよう」「この経験から何を学ぼう」と真正面から向き合う姿勢が大切。例えば失敗して進路変更を余儀なくされても、人生の貴重な回り道だと考えれば、そこでしか得られない収穫をもたらす。残念な結果が出たとしても、そこに至るまでの「正しかったこと」「認めてもいいこと」はあるはずで、そのことに気づけば変化は起こる。要は開き直ることで、失敗は怖くなくなり、不安は消えていくのだ。困難や逆境をチャンスに変えるという禅の思想をベースに、「悪い予感のほとんどは実現しない」「打算を捨てれば怖くない」など、のびやかに生きる58のヒントを紹介する。

(内外出版社 1540円)

「なぜ生きる意味が感じられないのか」泉谷閑示著

 現代人は満ち足りた環境でも「空虚感」を持ってしまうのが特徴である、と精神科医の著者は言う。

 社会問題化している不登校やひきこもり、自殺の問題。これらは経済格差や地域社会、学校環境の視点から議論がされているが、根底にある「満ち足りた空虚感」が見逃されているという。

 その空虚感を生み出している正体は私たちの「頭」。頭は望ましくない未来をあれこれ予測して「不安」を生み出す。一方で、予測を通して先が見えてしまったものに関しては興味を持てなくなり、最終的に満ち足りた空虚感だけが残るという身勝手な代物だ。

 例えば、しばしば心の問題として語られる「面倒くさい」という言葉も実は「頭」が生み出しているという。仕事や日常生活、余暇ですら、労力と得られる成果を予測して価値判断をしてしまう。面倒くさいと感じたときは、その気持ちは「頭」によって生み出されたものだと認識することで成果主義の生き方から逃れられるのだ。

 現代社会に蔓延する空虚感に対して、人間らしく生きるためにはどうしたらいいかを紹介する。

(笠間書院 1870円)

「もう一度、チャレンジ」本田晃一著

 経済が低迷する中、最近は「ほどほどの人生」や「足るを知る」ことこそ大切、と考える人が増えている。しかし、そんな生活を送る中で言いようのないむなしさや、マンネリを感じるようになったら、“変化のとき”のサイン。どんなに安定していても、喜びのない場所に身を置き続けることは、楽な生き方ではなく、窮屈さをもたらすからだ。

 ところが、いざチャレンジをしようとすると、あれこれ考え、腰が重くなるもの。そんなときは、「チャレンジする目的の初期設定を感情面に置くこと」が大切だと著者。例えば小説家としてデビューすることをゴールにするのではなく、まずは小説を書くことを楽しむことにフォーカスすれば、行動に移しやすく、かつ成果が出るという。

 ほかにも、チャレンジを阻むマインドブロックの外し方、追い風が吹く人間関係のコツなど、楽しい生き方を創造する「失敗しないチャレンジの方法」を伝授する。

(祥伝社 1650円)

「生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳」バク@精神科医著

 ADHDとジェンダーの問題で生きづらさを味わったという現役精神科医の著者。同様の悩みを抱える人々に寄り添うインフルエンサーとしての顔も併せ持っている。

 多くの悩める人々の共通点は、自分のあるがままの姿を受け入れてもらおうとしていること。それは、対策なしのノーガードで生きているようなもので、周囲に溶け込む「擬態」が必要という。擬態、つまりフリをすることで性格や考え方などを変えずに、周囲との不必要な衝突を回避できるというわけだ。

 例えば、「無差別挨拶で良い印象を与える」「アドバイスをされたらポジティブにふるまってみる」など。そして忘れてはいけないのが、完璧でなくてもそれらを実践できたことを「自分で思い切り褒め倒すこと」。そうすることで、自分自身をだまして考え方まで変えることができるという。どんなに小さなものでもいいから成功体験をして、自分を褒めることの積み重ねで必ずラクになると背中を押してくれる一冊。

(ダイヤモンド社 1540円)

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