「いねむり先生」伊集院静著

公開日: 更新日:

「その人が/眠むっているところを見かけたら/どうか やさしくしてほしい/その人は ボクらの大切な先生だから」と始まる本書は、著者の若き日を描く自伝的小説。

 先生とは、「ギャンブルの神様」と呼ばれ、阿佐田哲也の名でも知られる作家の色川武大その人だ。

 女優だった最愛の妻を病で亡くした主人公のサブローは、酒とギャンブルにのめり込み体を壊し、ただ人生に立ち尽くしていた。ある日、心配したK先輩から「先生」を紹介される。初めて会ったとき、先生は酒場の片隅で眠りこけていた。所かまわず突然眠りに落ちてしまうナルコレプシーという病気だという。

 先生と接するうちに、そのやさしさと「奇妙な安堵感」に包まれ、止まっていたサブローの人生の時間が少しずつ動き出す。

 やがて連れだって競輪の「旅打ち」へ出かけるようになる。旅先で自らの懊悩を先生に明かしたサブローは、先生もまた心に闇を抱え苦しんでいることを知る。

 敬愛する「先生」との思い出をつづりながら、主人公の再生していく姿を描く感動作。

(集英社 902円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動