「それぞれの風の物語」中場利一著

公開日: 更新日:

 不漁のためアナゴ漁師をやめた「俺」は、離婚した後、元カノの昌美がやっている喫茶店「テンノット」の2階に転がりこんだ。防波堤に座っているとき心地よく感じる風が10ノッ6であることからつけた名だ。元漁師仲間の大矢の兄の健一は、頼まれてイカナゴ漁に出て行方不明になった。真夜中に船だけが浮いていたという。1年ほどたった頃、健一の死体がイワシ漁の網にかかった。葬儀の日、大矢の姿が見えないと思ったら、誰もいない部屋で、健一の好きだった海苔弁を目の前に置いて、自分の海苔弁を黙々と食べている。「お兄ちゃん、おかえり。寒かったやろ」。(「テンノットの風」)

 海辺の町の喫茶店を舞台にした心温まる物語10編。

(光文社 1870円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動