「歩きながら考える」ヤマザキマリ著
イタリアと日本を頻繁に行き来していた著者だが、パンデミックによって日本での滞留を余儀なくされる。当初は焦りや不安を抱いたが、やがて立ち止まって得ることも多くあることに気づく。そして2年半が経った今、「早くどこかへ行かなければ」という焦燥感は消え、これまで気づかなかった自分の中の新しい引き出しを見つけた気分だという。戦争や食糧危機などの未知なる現実が迫る中、新しい環境に適応して新たな歩みを始めた著者のエッセー集。
政府の危機管理体制の矛盾を目の当たりにした日本人の変化、長く滞在することでわかった日本の社会風土がもたらす独特な狡猾さ、そして、できた時間でじっくりと取り組んだ趣味の昆虫飼育から学んだ死生観など。コロナ禍での日々をつづりながら思索を深める。
(中央公論新社 990円)