「市民オペラ」石田麻子著
市民オペラとは、西洋で生まれた総合芸術であるオペラに市民が関わり上演する日本固有の公演形態。その最大の特徴は、芸術活動を職業としない人々が活動の主役を担うことだ。
市民オペラの名称で最初に活動したのは、1973年に「フィガロの結婚」を上演した「藤沢市民オペラ」(神奈川県)だった。その背景には革新系首長が推進した市民会館の建設がある。会館を拠点に市民オーケストラや市民合唱団など市民による文化活動が盛んになり、開館5周年の記念行事としてオペラ公演に取り組んだのだ。
そうした歴史に始まり、各地域で生まれ、多様化する市民オペラの現状を俯瞰(ふかん)。
なぜ、日本の市民社会はオペラを求めてきたのか、その興隆から戦後日本の市民社会の形成と展開を読み取る解説書。
(集英社 1155円)