直木賞をめぐる喜怒哀楽
第168回芥川賞・直木賞の贈呈式が2月22日、都内で行われた。受賞者のあいさつで会場は温かい雰囲気に包まれた。
印象的だったのは、直木賞を受賞した千早茜氏のスピーチだ。同氏は、直木賞選考委員の北方謙三氏がたずさわった新人賞でデビュー。今回で直木賞選考委員を退任する北方氏に対して、「このタイミングで受賞できて本当に良かった。ダディありがとうございました」と、親しみをこめて感謝を述べた。
一方で、小谷野敦著「直木賞をとれなかった名作たち」(筑摩書房 2090円)では、文学賞に恨みを抱えた作家たちの逸話が紹介される。
たとえば、3回の直木賞落選を味わった筒井康隆氏。同氏は「大いなる助走」を発表し、作中で選考委員全員を皆殺しにして私怨を晴らした。また、同じく3度落選をした青山光二は「『直木賞』怨恨記」で、「直木賞が来れば人生が変わるという気持ちを捨てられない」と吐露している。
ほかにも本書では、舞城王太郎のホラー作品「淵の王」(2015年)や、郷ひろみの「ダディ」(1998年)など、直木賞のジャンルから外されているものの面白い文学を107冊紹介。賞に縛られない魅力あふれる文学がここにある。