「CATHOLICAカトリック表象大全」スザンナ・イヴァニッチ著、金沢百枝監修、岩井木綿子訳
「CATHOLICAカトリック表象大全」スザンナ・イヴァニッチ著、金沢百枝監修、岩井木綿子訳
キリスト教は、絵画などさまざまな芸術や工芸品を用いて神の栄光をたたえてきた。本書は、神の名のもとに生み出されたこうしたカトリック世界の宗教芸術を視覚文化という切り口で解説した豪華ビジュアルブック。
教えの基本を成す十戒では、偶像崇拝が禁止されているにもかかわらず、キリスト教には視覚に訴える芸術が遺産として伝えられ、信者の身の回りは日々の祈りを促す品々であふれている。
7世紀初頭の教皇グレゴリウス1世は、「絵を崇拝することと絵物語を使って崇拝すべきものについて学ぶことは別である」と、信仰の実践における図像の使用を正当化。
文字が読めない人に信仰を広め、神の教えを根付かせるため、聖堂の壁や、家庭にある品々に教訓的な絵が描かれてきた。
なかには、福音書記者の聖ルカが描いたと伝わる聖母子像のように、人の手を介して神が直接描いたと伝えられる絵画も複数存在するという。
本書では、装飾が施されたミサ典書や時祷書などの書物にはじまり、聖堂の壁に描かれたキリストの生涯、受胎告知や最後の審判をテーマにした祭壇画、磔刑図などキリストの姿そのものを描いた絵画はもちろん、修道服や司教らがミサのときにつける祭服、大聖堂などの建築物、信者が祈りのために手にするロザリオなどの宝飾品や祭りの山車、信者が体に刻んだキリストやマリアを描いたタトゥーまで。広範囲の視覚文化を550ものカラー図版で紹介。
これらの品々は、単なる宗教の副産物ではなく、聖書の言葉やミサの儀式と同様の宗教そのものでもあることがよく分かる。
カトリック芸術の全容を概観しながら、それらが祈りや神の栄光をたたえるためにどのように利用されてきたかを解説した比類なき図鑑だ。 (東京書籍 4180円)