「死者宅の清掃」キム・ワン著 蓮池薫訳
「死者宅の清掃」キム・ワン著 蓮池薫訳
不動産屋から、自殺した若い女性のワンルームマンションの清掃を依頼された。ドアノブを回すと、柔軟剤のラベンダーの香りと人間の腐敗臭が混じり合って鼻をついた。
明かりをつけると、部屋の真ん中に薄ピンク色のキャンプ用テントが立てられていた。周りにはテレビも化粧台もなく、天井に届きそうなスチールの洋服棚があるだけだ。彼女はトイレのガス管で首を吊ったらしく、テントからトイレまで血液が垂れていた。
テントの後ろに「本当にちょっとだけ泣いた」といった心が疲れた人向けの本が何冊かあった。テント内で本を読む時、彼女はどんな気持ちでいたのか。
韓国の特殊清掃人が見た孤独死の現場の記録。
(実業之日本社 1980円)