「本棚には裏がある」酒井順子著
「本棚には裏がある」酒井順子著
1982年、ドイツ出身の日本文学研究者、イルメラ・日地谷=キルシュネライトが日本滞在中、女性作家たちにインタビューをした。その記録が最近、出版されたのだが、書名は「〈女流〉放談 昭和を生きた女性作家たち」(岩波書店)となっている。当時は「女性作家」が「女流作家」と呼ばれていたのだ。「女流文学賞」が存在し、書店には「女流文学」の棚があった。
斎藤美奈子は「女流作家」という言葉を死語にしたのは、80年代後半にデビューした山田詠美や吉本ばなならの力が大きいとみている。86年には男女雇用機会均等法が施行され、その翌年、芥川賞と直木賞の選考委員にはじめて女性が就任。「女流」の枠は崩壊した。(「『女流』の消滅」)
世相を読み解く鋭いエッセー。
(毎日新聞出版 1760円)