「小さなことからコツコツと」西川きよし著
「小さなことからコツコツと」西川きよし著
昭和38年2月の厳寒の朝、16歳の西川潔は文楽座の楽屋口で喜劇役者の石井均を待っていた。「弟子にしていただきたいのですが……」と哀願しても、「ああ、ごめんね」と立ち去って行く。だが、1カ月興行なので、朝晩60回のチャンスがある。9日目にようやく楽屋に入れてもらえた。
「休みなし、給金なし」で、舞台の袖で芝居を見られるのが「報酬」という厳しい生活。その後、吉本新喜劇に移籍するが、「通行人A」の役ばかり。
ある日、天才少年漫才師として華々しくデビューした横山やすしの相方にという話がきた。「芝居よりも漫才のしゃべくりのほうが似合うていると思うんや」と口説かれて……。
芸能生活60周年を迎えた漫才師の自伝。
(文藝春秋 1760円)