「楠木正成 河内熱風録」増田晶文著
「楠木正成 河内熱風録」増田晶文著
後醍醐天皇の皇子である大塔宮護良親王は、1331年、倒幕を図って挙兵し、笠置山が落城した後、河内の楠木正成の砦に逃げ込んだ。
広間に招き入れられた大塔宮は、正成の太刀に目を留めた。
「おお、これは父上からの太刀ではないのか?」
大塔宮は太刀を抜いて正成に向け、後醍醐帝が正成に菊花紋をつけることを許したのに、太刀に菊水紋をつけたことをとがめた。正成が領地の河内のことだけを考え、後醍醐帝の大志を無視していると。正成はその太刀が豪華絢爛な飾り太刀ではなく、実戦用の野太刀であると言い、「この太刀をもって命が尽きるまで戦え」というのが帝の意志だと答えた。
楠木正成の激動の5年間を描く歴史小説。
(草思社 3080円)