「稀代の本屋蔦屋重三郎」増田晶文著
吉原で貸本屋を営む蔦屋重三郎は、いずれは自分で本を出す版元になりたいと考えていた。
吉原の遊女を紹介する「吉原細見」の版権を持っていた鱗形屋に取り入って、改版の仕事を任されたのをきっかけに、念願の版元になる。才能のある戯作者、絵師を発掘して次々に江戸っ子のニーズに合った本を出版するが、やがて危機に見舞われる。風刺の効いた恋川春町の黄表紙が松平定信に睨まれ、召喚されたが、それを拒んで春町は自害した。
追及の手は蔦屋にも及び、重三郎は拷問を受けた上に家を半分取り壊されるという処罰を受ける。
山東京伝、歌麿、写楽などを世に出した反骨の出版人の野望を描く時代小説。(草思社 1800円+税)