「死んでしまえば最愛の人」小川有里著
「死んでしまえば最愛の人」小川有里著
杏子さんは結婚して遠く離れた地に住む幼なじみの美代ちゃんと会うことになり、中間地点の駅で待ち合わせした。杏子さんの夫は5歳年上の81歳で元気だが、動かない人なので命令して本人にさせるようにしている。「食うか食われるか、恐竜世界のような老後よ」。美代ちゃんは笑って「それでも死んでしまえば、ああ、いい夫だったと偲ぶようになるわよ」と言う。昔は夫が重くて逃げ出したいと言ってたのに。夫は定年後、あちこち悪くなって妻の帰りを待っているだけだったが、美代ちゃんは夫の死後、「お帰り」という温かい声が自分への愛情だったと気づいた。(表題作)
シニアの生活を描く39編の超短編小説。
(草思社 1870円)