「それは令和のことでした、」歌野晶午著
「それは令和のことでした、」歌野晶午著
船橋和世は変わり者だった。息子の太郎に、「太郎」という名は「世間の偏見をはかるためのリトマス試験紙よ」と言って、わざわざ古風に名付けた。そのうえ、フリルのついたシャツやスカート姿で通学させられたので、みんなに「女男」とからかわれた。
太郎は中学からは共学の私立の中高一貫校に進学。だが、そこでもいじめはあった。同級生の看山家親(みやまえちか)はパンツを脱がされた太郎の動画をネットで世界デビューさせたと言う。太郎が看山ともみあっていると、看山が階段から落ちて、動かなくなった。太郎は逃げ出すが、間違えて看山のバッグをもってきてしまった。(「彼の名は」)
奇妙な味わいのミステリー7編。
(祥伝社 2090円)