その健康常識、本当?老いを恐れないための本特集
「老いるが勝ち!」和田秀樹著
「年は取りたくないものだ」
中高年を過ぎるとそんな言葉を言いがちになるが、本当にそうだろうか。実は老いに対するネガティブなイメージは“刷り込み”も多く、こと健康に関する情報は誤りであることも多い。今回は、誰にも等しくやってくる老いと健康に関わる不安を払拭してくれる4冊を紹介する。
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「老いるが勝ち!」和田秀樹著
「人生の幸福度が最高値に達するのは82歳以上」。アメリカの研究機関が世界145カ国を対象に行った調査結果だ。これは、老化を受け入れることで自分の価値観が変化し、満足感を得る事柄が変化するためだという。
しかし、これを阻害してストレスの原因になるのが、間違った健康常識であると高齢者医療に携わる著者は言う。例えば、健康の大敵とされるメタボ。痩せてBMIを25以下にしたり、服薬してコレステロール値を下げることがよしとされている。ところが、東北大学による5万人規模の調査では、BMIが25から30未満のやや太めの人の平均余命が一番長いことが分かっている。また、糖尿病はアルツハイマーにつながりやすいと言われている。しかし高齢者の遺体を調べた調査では、糖尿病でない人の方が糖尿病患者の3倍の確率でアルツハイマーになっていたという。
健康に対する刷り込みを取り除き、老いを楽しく迎えるための新常識が満載だ。 (文藝春秋 990円)
「健康の分かれ道」久坂部羊著
「健康の分かれ道」久坂部羊著
健康への入り口になるはずの健康診断。しかし、落とし穴もあると警鐘を鳴らす著者は、現役の健診センター勤務医だ。
健康診断による数値は、年齢が高いほど基準値から外れる率が高くなる。これは、高齢者を若者と同じ基準で判定しているためだ。例えば、血圧である。高血圧が良くない理由は、動脈硬化の危険性が高まり心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まるためである。
しかし、高血圧によって動脈硬化が起こるには20~30年かかる。30代の人の血圧が160なら危険だが、60歳以上で160になっても、動脈硬化になる頃には寿命も迎えるため無理に下げたり必要以上に心配してストレスをためることはないと本書。
逆に、中高年になると血圧を下げ過ぎることで脳梗塞などの危険性が高まることもある。“つまみ食い”の情報だけでは真の健康は得られないのだ。年齢を重ねるほど正確な医療情報を得て、賢く健康を追い求めることが必要だと教えられる。 (KADOKAWA 1012円)
「百歳まで歩ける人の習慣」伊賀瀬道也著
「百歳まで歩ける人の習慣」伊賀瀬道也著
健康寿命を延ばすために健診を受け、疾患予防のために薬を飲む。それもひとつの方法だが、抗加齢医学の専門家である著者は、「歩く」という簡単な運動こそが健康長寿につながるとしている。
いわゆる正常な歩行をするためには、耳や目、感覚神経による「外界への適応機能」、心血管系や骨、靱帯などによる「運動機能」、そして脳神経や末梢神経系による「バランス機能」が整っている必要がある。逆に、歩くことでこれらの機能が日々鍛えられることになる。
また、歩くことで血流が促進され、加齢とともに減少する毛細血管が鍛えられる。すると、全身の細胞に酸素や栄養が届けられ、代謝が促進されたり、神経細胞が活性化されるなど、いいことずくめなのだ。
本書では、かかとの上げ下げや片足立ちなど、いつまでも歩ける体をつくるためのエクササイズをイラストで解説。また、歩くときに取るとよいコラーゲンや抗酸化物質などの成分も紹介している。 (PHP研究所 1210円)
「老化と寿命の謎」飯島裕一著
「老化と寿命の謎」飯島裕一著
誰にでも平等に訪れる老い。本書では、そのメカニズムを解説すると共に、老化に伴う体の変化との上手な付き合い方を伝授している。
例えば、年を取ると睡眠時間が減ってくるもの。若い頃はいくらでも眠っていられたのに、中高年を過ぎると朝早く目覚めてしまい、これをストレスに感じる人も増えてくる。
しかし、睡眠の意義を理解すれば、その悩みは解消される。そもそも睡眠の役割には、糖や脂肪などの代謝調整や促進、骨や筋肉の質量アップなどがある。トップアスリートにとって睡眠が重要といわれるのもこの点からだ。
一方、年を取ると若い頃に比べて活動量も代謝量も減少する。つまり、短い睡眠時間で“事足りる”ようになるのだ。国立精神・神経医療研究センターの研究では、若い人の睡眠時間が6時間を切ると健康を害する危険性が高まるが、高齢者では健康リスクに影響しないことが分かっているという。
メカニズムを知り、快適な老いにつなげたい。 (講談社 1034円)