「シャーロック・ホームズの世界大図鑑」アンドルー・ライセット著 日暮雅通訳
「シャーロック・ホームズの世界大図鑑」アンドルー・ライセット著 日暮雅通訳
世界で最もよく知られ、そして愛されている架空の人物のひとり「シャーロック・ホームズ」とその物語、そして作者のコナン・ドイルについてさまざまな視点から解説したビジュアルブック。
まずは、この有名な「コンサルティング探偵」が暮らした当時のロンドンという都市について。
ホームズの活躍を描く56編の短編と4つの長編は「正典」と呼ばれる。
正典の第1作「緋色の研究」で最初に登場するロンドンの地名は、クライテリオン・バーだ。ピカデリーサーカスで待ち合わせによく使われる場所で、アフガニスタンから戻ったワトスン博士は、ここでかつての手術助手のスタンフォードと再会。スタンフォードがワトスンをシャーロック・ホームズに紹介するセントバーソロミュー病院は、東に2マイル行ったロンドンのシティー本体の境界部分にある。
そんなホームズの時代のロンドンの詳細を物語を引用しながら解説。さらにドイルが、ホームズの下宿にあの「ベイカー・ストリート」を選んだ背景などにも迫る。
以降、ホームズもその生みの親のドイルもリベラルな帝国主義者だと指摘する当時の政治的・社会的背景の解説から、探偵という仕事がどのように発展し、ホームズがどのように取り組んだのか、さらに映画化や舞台化における描かれ方を振り返り、作者の死後ホームズの名声がどのように広まり続けてきたのか検証する。
多くの写真や当時の様子が分かる絵画、さらに正典の挿絵など、多くの図版を添えて語り尽くす。
ドイル伝で知られる伝記作家の著者が、類書とは一線を画し、物語の登場人物であるホームズとその生みの親である現実世界のドイルの人生と功績を追い、再解釈したシャーロキアン必携の本。
(河出書房新社 4950円)