「東京あんこ図鑑」エクスナレッジ著
「東京あんこ図鑑」エクスナレッジ著
どらやきはもちろん、まんじゅうやおはぎ、もなかなど、和菓子になくてはならないのが「あんこ」。
本書は、東京にある「あんこ」の名店を訪ね歩くフォトガイドブック。
築地に本店を構える「塩瀬総本家」は、日本のまんじゅうの元祖といわれ、その歴史はなんと室町時代までさかのぼる。
貞和5(1349)年に来日した中国僧・林浄因が、禅僧でも食べられるよう中国のマントウ(肉まん)に、肉の代わりに煮た小豆に植物由来の甘味料を加えて作った「饅頭」が始まりだという。
「饅頭」作りは子孫に受け継がれ、「饅頭」研究のために中国に留学した7代目が宮廷で食べられていた薯蕷(じょうよ=大和芋)の皮を使った「饅頭」の製法を持ち帰る。これが現在の同店の名物「志ほせ饅頭」の元となっている。
銀座の「萬年堂本店」は、元和3(1617)年に京都で創業。
同店の名物「御目出糖」は、自家製のあんこを粉類と混ぜそぼろ状にした上に蜜漬けの大納言小豆をのせて蒸した高麗餅をルーツにした伝統菓子で、元禄の頃に完成した製法を今も守り続けている。
こうした老舗和菓子店の一方、家族経営の「くにたち 三芳野」などのような庶民的なお店も取材。
あんこは店主が究めた独自製法で作られており、あんこへのこだわりは老舗に劣らない。
同店の名物は、クルミを練り込んだ香ばしい生地のお団子を注文を受けてから1本ずつ丁寧に焼き上げ、たっぷりとあんこを添えた「クルミ助小豆つぶあん」だ。
ほか、あんこ界のニューウエーブ「タケノとおはぎ」など老舗から新進気鋭の店まで。18店の名物はもちろん、店の歴史、あんこやお菓子作りの舞台裏まで取材。一読したら全部の店を制覇したくなるはず。 (エクスナレッジ 1760円)