「在野と独学の近代」志村真幸著
「在野と独学の近代」志村真幸著
現代では、科学や学問は大学や研究機関に所属する研究者が担うものと思われている。給料をもらって研究する「プロ」とは一線を画し、独学の「アマチュア」研究者こそが学問の中心だった時代がかつてあったという。
そんなアマチュア研究者の代表が明治から昭和初期にかけて活躍した生物学者・民俗学者の南方熊楠だ。独学で学んだ彼は、大学で教えたことも、博物館や研究所で働いた経験も皆無。19世紀末に英国に8年間留学するが、当地でも大学に在籍する代わりに、アマチュアの学問世界に入り込み、図書館や博物館、植物園、学術雑誌上での交流が勉強法だった。
本書は、南方をはじめ、ダーウィンやマルクス、牧野富太郎ら独学研究者たちの人生を追い、学問の意味や豊かさ、その可能性を示す。
(中央公論新社 1056円)