「梅の実るまで」高瀬乃一著
「梅の実るまで」高瀬乃一著
茅野淳之介の家はかつて徒目付(かちめつけ)を務めていたが、淳之介が15歳のとき、父が自害したため、小普請入りとなった。お役目がないため小石川で私塾を開いて糊口をしのいでいるが、ここで学問を修めても官吏登用の道は開けないと最後の門下生も去った。ある日、町廻り同心をしている幼なじみの青柳梅太郎が訪れ、深川の女郎屋に急進的な水戸浪士が頻繁に出入りしているので、そこで洗濯女をしている楽という娘を見張ってほしいという。楽は国元から差し向けられた女だと。(「水仙香」)
報酬に釣られて仕事を引き受けたことから、時代の転換期に、坂下門外の変の渦中にのみ込まれていく青年を描く時代小説。
(新潮社 1980円)