松竹解任騒動 奥山和由を奮い立たせた深作欣二からの手紙
もう一度受験に挑み、社会のレールにしがみつこうとしているのに、本当はそうしたレールに乗ること自体が疑問で、がんじがらめになっている。実際に監督が口にしたわけではありませんが、そんな状況は百も承知とした上で、こう、教わったんです。
でもな、ここに来ればできるぜ。そこを突破し、爆発できるんだ!
■深作欣二賞を作ろうと思う
もちろん、その後どっぷりつかった映画業界だって完全に自由というわけではありません。プロデューサーになり、日本映画の既成のシステム、バジェット(予算)繰りなどを突破して、ハリウッドに打って出るような大作、「仁義」に続く刺激的な作品を世に送り出そうとしていた98年、突然、専務の職を解かれ、松竹を追われました。数日後、真っ先に手紙を下さったのが、京都で新作の撮影中だった深作監督です。
「あなたが再び挙兵の日には、まだ斎藤実盛ぐらいの役には立つつもりですよ」とつづられていました。さらに電話があり、「ピンク映画のドキュメンタリーを撮ろうと思うんだ。撮影現場を見に行くんだけど、どうだい」って。ご一緒したところ、先方は巨匠が見学に来るからと、オフだったのに出演者を集め、濡れ場を実演してくれました。ところが肝心の絡みのところで、男女の荒い息づかいのほかに、寝息が聞こえてくる。その主は深作監督で、何と気持ちよさそうに船を漕いでいるんです。さすがに相手を怒らせてしまった帰りの車でこう一言、「この話はダメだな」。