松竹解任騒動 奥山和由を奮い立たせた深作欣二からの手紙
申し訳ありませんが、噴き出してしまいました。それでまた、やる気になり監督のところにも企画を持ち込みました。「よし、やろうやろう」って言ってくれるのですが、その体はがんにむしばまれていたんですね、「もう長編をつくる体力はない。20~30分の短編、それも国内なら」とおっしゃいました。それで企画した、篠田正浩、大島渚監督との3人でのオムニバス作品。監督は「組長の首」というタイトルでもう一度撮りたい、と。残念ながら日の目は見ず、「約束、守れないかもしれない」という言葉を残して亡くなられました。
解任騒動の時に下さった手紙にある実盛とは、源氏から平氏へと鞍替えした平安末期の武将です。老兵となり、源氏と戦うことになった時、白髪を黒く染め若武者のようないでたちで討ち死にしたという有名な話を後に知りました。今また京都に立ち、空を見上げると、映画に生き、最期まで力を振り絞った監督を思い出します。
映画とは白いスモークの向こう、あるいは曇りガラス越しに垣間見える女――。何度も裏切られ、もはや愛しているのかも分からないけれど、「いつかギラギラする日」で深作監督とご一緒した時は、確かにこの手に女の存在を感じることができた。深作欣二賞をつくって、アウトローのDNAを継承していきたい。
自分自身、もう一度、危なく魅力的な女に手を出したい。しっかりモノにして、天国の監督に見てもらうのです。