芸能の価値観伝授 はしのえみを育てた“父親”萩本欽一の至言
とにかく受け売りやマネではなく、常に自分の言葉で自分らしい動き方やリアクションをしなさい、工夫しなさいと教えられました。その教えそのままの公演が昨年3月、明治座で行われた「THE LAST ほめんな ほれんな とめんな」。欽ちゃんの最後の軽演劇舞台です。
台本はあってないようなもの。ストーリーは決まっていますが、役者さんたちはどういった役になるかはわかっていなかった。そして稽古をしていくうち、だんだん役柄が決まっていって、しかも本番直前どころか、初日が始まってから楽日までもセリフを変え、アドリブを入れてました。
■最後の舞台でねぎらわれ…
アドリブやリアクションの変更はそれぞれの役者さんの判断に任せられていて、相手には事前に言わなくてもいい。「だって、その方がリアルだもん」というのが欽ちゃん流。想定外のアクションやセリフがあるからこそ、リアクションも真に迫るわけですし、それをうまく切り返して、笑いを取るのが役者さんの力量ということです。
ですから、3週間ほどの公演中、同じお芝居をした日は一度もないんです。公演中はずっと緊張しました。自分自身も前日とは違ったお芝居をしなくちゃならないし、同じシーンに出てる他の役者さんも、いつアドリブを入れてくるかわからない。そんなプレッシャーがその日の幕が下りるまで続きました。