追悼・川崎敬三さん TV史に残る生放送中のアドリブ降板劇
「愛車はロールスロイス。昭和の二枚目大スターでした。でも、近寄りがたい雰囲気ではなく、素顔は繊細でシャイな方でした。ある年の忘年会では僕ら番組スタッフを20人以上も引き連れて高級クラブに飲みに行ってくれましたが、すっと会計だけ済ませていなくなってしまう。そんな方でした。俳優だからか、僕の結婚式の挨拶もそうでしたが、生放送のワイドショーなのに事件リポートでもなんでも台本は事前にぜんぶ頭に叩き込んでから臨んでいたのが忘れられません」
そんな川崎さんの唯一にして最後の“アドリブ”は皮肉にも「アフタヌーンショー」を降板する際だったという。
「やらせ事件が社会問題化していた時のことです。生放送中にいきなり“責任を取って今日をもって番組を辞めます”と発言したものだから大騒ぎになりました。もちろん、プロデューサーも局の幹部も寝耳に水。でも、僕は川崎さんらしいなと思いました。表情には見せませんでしたが忸怩たる思いがあったのかもしれません」
番組降板後は東北地方のホテルの雇われ社長を務めたりもしたが、この10年ほどは隠居生活を送っていたという。本人の意思で死去は伏せられ、最近になって喪中はがきが関係者に届き、亡くなったことが明らかになったというのも、川崎さんらしい美学だったのかもしれない。
合掌。