「中国ミステリー探訪」井波律子著
「中国ミステリー探訪」井波律子著
ミステリーは欧米で成立した文学ジャンルだが、中国でも3世紀中ごろにはじまる六朝時代に大量に作られた怪奇短編小説「志怪」にはじまり、明・清の「公案(事件)小説」に至るまで、さまざまなスタイルのミステリー風の作品が作られてきた。
本書は、千数百年にわたって読み継がれてきた中国式ミステリーの歴史を一望したブックガイド。
志怪小説の最高峰「捜神記」に収録された「東海の孝婦」は怪奇ミステリー。姑殺しで処刑される嫁を主人公にしたこの作品には、冤罪や事件の真相を見抜く名裁判官など、後世の中国式ミステリーの基本的な道具立てがすでに備わっている。
以降、ルパン全集の翻訳にかかわったのを機に創作に転じた20世紀前半の孫了紅の「侠盗魯平奇案」シリーズまで。70作以上の作品を紹介。
(潮出版社 1320円)