睡眠中の脳の働きが「ひらめき」を生むのはなぜか?
「親の認知症が進んだようで、夜、寝なくて困ります。昼はいつもうとうとしていて……。どうしたらいいのでしょうか」
ご家族からよく寄せられる質問です。
良質な睡眠はとても大切です。睡眠リズムが崩れると、気持ちいい生活が壊れて、思考が低下します。ホルモン的にも23時から3時までは睡眠がとても大切になります。さらに、高齢になると、睡眠時間は6時間程度ですので、23時から5時までは気持ちいい睡眠をとってもらうための治療が必要です。
今回は「睡眠の脳科学」についてお話しします。
1997年から3年間、デンマーク国立オーフス大学脳神経病態生理学研究所で脳卒中研究チームの責任者を務め、脳循環代謝の研究をしていました。その頃、時々不思議なことが起こり、まだ何も証明されていない“科学”がひらめくことがあったのです。
当時、自分が研究していた脳卒中科学で、「どうすれば脳梗塞になりかけた脳組織を救うことができるのか」について、脳循環代謝の機序からいつも考えていました。しかし、よくわかりませんので、とにかく世界中の論文を読んで科学を勉強したのです。面白いもので、どんなに難しい科学誌も3回読むと何となく理解できたような気になってきます。そして、たくさんの論文結果と方法論を勉強して、睡眠前にあれこれと考えて眠ると、ある朝、ひらめくことがあったのです。