64、ちはやふる…1粒で二度おいしい「2部作映画」の狙い
製作関係者はエビス顔だ。GW期間中に“前後編2部作”で勝負した2作品がしっかりと結果を出している。
7日公開の佐藤浩市(55)主演「64―ロクヨン―前編」(東宝系、瀬々敬久監督)は、6月11日公開の後編と合わせて最終的に興行収入40億円を見込める好スタートを切り、3月にひと足早く“前編”の「上の句」を封切りしていた広瀬すず(17)主演「ちはやふる」(東宝系、小泉徳宏監督)も「下の句」と合わせて興収30億円超えは堅い。「15億円がヒットの目安といわれる中で、『64』と『ちはやふる』は大成功といえるでしょう」(映画ジャーナリストの大高宏雄氏)。
内容も見応え十分。「『64』前編はラストでようやく本筋の事件が描かれ、間延びした印象があるものの、重厚なつくり。『ちはやふる』も原作の世界観をより長く楽しみたいというファンの気持ちに寄り添っていた」(映画批評家の前田有一氏)と評判は上々だ。
ハリウッドの影響もあってか、ここ数年、邦画界でも2部作ムービーが目立つ。古くは全6部作で上映時間9時間半に及んだ戦争映画の金字塔「人間の條件」(59~61年)などがあるが、近年の火付け役は、06年に公開した藤原竜也(33)主演の「デスノート」だ。前編で興収28.5億円をマークし、半年後に公開した後編は180%増の52億円という驚異的な数字をたたき出した。70年代ごろから続いた“洋高邦低”の映画市場は、06年を境に形勢が逆転。「デスノート」の成功例が邦画盛り返しのひとつのメルクマールとなっている。