築地市場に密着1年 遠藤尚太郎監督が映画で伝えたいこと
社会に出た時にはすでにバブルは崩壊し、経済も社会も沈滞ムード。にもかかわらず、「築地市場には下を向いて歩いている人がひとりもいない。皆、胸を張って歩いている。彼らの仕事に対する情熱や自信を描きたいと思ったんです」。
29日に行われた完成披露舞台挨拶では、市場内で3代にわたって仲卸業を営んでいる島津修さんも登壇。「これから一体どうなるのか、僕らが聞きたいくらい」と不安も口にした。その一方で、「仕事に誇りをもって、日々、真剣勝負している僕らがいるところが市場になる。それだけはたしかです」と力強くも語った。
今作では島津さんはじめ場内で働く仲卸ほか、築地と日頃から付き合いのある卸売会社、料理人、氷製造販売会社や評論家など150人の声を聞いた。撮影収録時間は602時間。取材する中で遠藤監督は「延期の可能性も感じていた」と言う。
「ただ、変化するのは市場に限った話ではない。消費経済も家族形態も常に変化していく。その中でなにを誇りとし、重視するのか。市場を最終的に支えていくのは、消費者である僕らです」
芸術と食欲の秋。深い気付きを得る一本になりそうだ。