松元ヒロ マルセ太郎さんから学んだ「忖度しない」大切さ
それで事務所を辞めて独り立ちすべきか否かを迷っていた98年。マルセさんに相談したら「俺は事務所を変わろうと思ったことはない。マネジャーや事務所が変わっても俺の芸は変わらないんだ」と言われたのです。それを聞いて逆に「それじゃ辞めよう」と決めました。マルセさんのように自分の思いをきちんと伝えたかったからです。
ひとりになって本当に自由になりました。日本国憲法がいかに大切かをネタにした「憲法くん」をはじめ、80年代、90年代は普通に演じてたのにいつのまにかタブーになった社会問題、今なら森友・加計両学園の疑惑、解散・総選挙……一貫して庶民の視点から権力者を風刺してきました。
時には“左翼芸人”と呼ばれ、番組のディレクターからは「面白いんだけど使えない」と何度も言われてます。でも、僕はそれでいい。立場が明確だから敵ができてもそれ以上に味方が多い。
有事法制が国会で議論されている時にこんなこともありました。ある落語家さんとの舞台で「公明党はブレーキ役として与党にいると言いながら実はアクセルを踏んでいる」と話しましたら、創価学会を名乗る青年が楽屋へ談判に来たのです。それで「平和の党、福祉の党と自称しながら現実は違うじゃないか」と事例を挙げ、「君たち若い力で、本来の姿に戻すべき」と諭したところ、納得して帰って行きました。こちらに確固とした信念があれば、喧嘩腰の相手でも話せばわかってくれるもの。それを教えてくれたのがマルセ太郎その人。一生の恩人です。