二代目白鸚襲名へ 松本幸四郎が「大石最後の一日」を熱演
美男で華やか、軽妙で面白く笑わせる――人気役者の大半がそういう人たちだ。しかし尾上松緑はそのどちらでもない。その松緑が国立劇場の「坂崎出羽守」で主役を務め、評判になっている。大正時代の1921年に作家・山本有三が六代目菊五郎のために書いたもので、二代目松緑が継ぎ、今回、孫の四代目が初めて取り組み、36年ぶりの上演となった。
「坂崎出羽守」は、女性に嫌われる「男の悲劇」を描き、救いのないラストの暗い芝居だ。これが松緑に合っている。坂崎出羽守という人物の持つ「闇」が迫ってくるのだ。見ていて楽しいわけではないし、陰々滅々とした気分になる。しかし、引き込まれる。これも芝居の面白さだ。毎月見たいとは思わないが、年に一度はこういうダークな歌舞伎もいい。
歌舞伎座は顔見世興行で、菊五郎、幸四郎、仁左衛門、吉右衛門、藤十郎と大幹部が揃って、それぞれの得意とする役を演じている。若い世代では染五郎のみが「鯉つかみ」で主演。来年1月に「松本幸四郎」を襲名するので、染五郎としては最後の歌舞伎座となり、他に仁左衛門の「仮名手本忠臣蔵」と父・幸四郎の「大石最後の一日」にも出ている。