社会派映画「デトロイト」 なぜ賞レースで黙殺されたのか
批評家や観客の評価は高くオスカー確実とみられていたが、ふたを開けるとノミネートすらされず賞レースからは無視された格好に。「白人警官による黒人差別」というデリケートな題材だけに、“無冠”の不自然さが逆に話題になっている。
「確かに映画の出来のよさからすれば奇妙なことです。ただビグロー監督はビンラディン暗殺作戦を描いた『ゼロ・ダーク・サーティ』のときも、『民主党の功績を描いた映画を選挙日直前に公開しようとしている』と共和党から大クレームを浴び、公開延期に追い込まれた。演出の手腕を評価される一方で、中身はプロパガンダ的との声もよくあがる“お騒がせ監督”です。まして本作は50年も前の未解決事件の映画化ということで、果たしてどこまで映画が真実に迫っているのか。審査員たちも測りかねたのかもしれません」(前出の前田氏)
今も根強く残る差別問題。トランプ政権になって問題はエスカレートする一方だが、女流監督からのキョーレツな問題提起に、映画賞審査員たちも思わずひるんだか。