興収イマイチも…本格ヤクザ映画「孤狼の血」を評論家絶賛
冒頭の豚の糞を食わせるリンチシーンに始まり、対立する組の人間の耳を食いちぎったり、女性の性器をもじった親父ギャグを連発したり、えげつない描写がてんこ盛り。
「お上品で物足りない昨今の日本映画界において、忖度なしの刺激的な世界を描いてくれた。個人的には今年の暫定ベストワン」と絶賛するのは映画評論家の秋本鉄次氏だ。
「消灯された暗い劇場で見る映画というものは、行儀の悪いものだと再認識させてくれました。描写のエグさや下品なセリフの数々……。僕もそのひとりですが、非日常的なバイオレンスに憧れを抱く層は必ずいる。女優陣も『仁義なき戦い 広島死闘篇』(73年)で梶芽衣子が演じた役がそうであったように、単なる彩りに甘んじるのではなく、真木よう子も2番手の阿部純子も、したたかさを持ち合わせた女性を好演していました」
役者人生40年の節目に同作を選んだ役所や、俳優の顔が定着したピエール瀧、ベテランの石橋蓮司あたりはこれまで演じてきた役柄と同質で安定感抜群だったが、それは逆を言えば意外性に乏しいともいえる。その中で「助演の松坂桃李が光っていた。上層部からの内偵指示を素直に受け入れたり、表面的な悪徳デカを見たままに評価してしまったり。めまぐるしく変わる周囲に翻弄され、右往左往する新人デカを好演していました。出番が増える後半はさらにいい」(前出の大高氏)。
仕事に疲れたオトーサンが見れば、劇場を出るときは肩で風を切っているに違いない。