「空飛ぶタイヤ」で好演 ディーン・フジオカの新たな魅力
ロシアW杯のコロンビア戦終了後、DFの長友佑都は「(これは)みんなで勝ち取った勝利」と語っていた。当たり前のコメントに聞こえるが、そうではない。あの試合はまさに総合力の産物だった。筆者はすぐに、映画「空飛ぶタイヤ」のことを思った。
本作は、主演の長瀬智也を筆頭にオールスター映画にして、俳優の個性を最優先した配役が見事だった。それぞれの連携プレーが良く、俳優陣が全員で映画の勝利を称え合ったかのような印象があった。勝利とは、中身の良さと興行のヒット(最終興収20億円弱)である。
なかでも主要人物のひとり、ディーン・フジオカが良かった。あの整った風貌はどんな役でも合うということはなく、これまでの出演作の多くが彼の持ち味と役どころがどこかちぐはぐだった。それが、本作では自身が勤務する自動車メーカーの危機を穏やかな風貌のままに冷静沈着な行動力ではね返してみせ、これが彼の新たな魅力につながっていた。
運送会社専務役の笹野高史がまた、あきれ返るほどうまい。いわば会社の大番頭で社長(長瀬も好演)の独断をいさめつつも、その意向も無視できない複雑な役をほぼ完璧に演じていた。笹野は、日本映画界の至宝である。