高橋克典主演「不惑のスクラム」が描く男たちの事情と幸福
NHK土曜ドラマ「不惑のスクラム」の主人公は、かつて傷害致死事件を起こした丸川良平(高橋克典)だ。5年間服役して出所したが、仕事も家庭も失った自分に絶望していた。
河川敷で死のうとした際に出会ったのが、宇多津(萩原健一、好演)という初老の男だ。高校時代にラグビー部だった丸川は、宇多津が率いる草ラグビーチーム「大坂淀川ヤンチャーズ」に引っ張り込まれる。
このドラマの特色は、丸川だけでなくチームに所属する男たちにもしっかりスポットを当てていることだ。たとえば陣野(渡辺いっけい)は、会社では窓際部署に送られ、自己主張ばかりの若手社員に閉口している。13年前に妻が男と蒸発した家庭では、高校生の娘がろくに口をきいてくれない。
また宇多津の元部下である緒方(徳井優)は、ヤンチャーズの雑用を一手に引き受けているが、家では妻と介護を要する母親が待っている。彼らにとって週末のラグビーは日常を支える、心のオアシスのような存在だ。いや、そういう存在をもつ男たちの幸福を描くドラマだと言っていい。
一度は丸川の過去が明らかになったことでチームの和が乱れたが、再びスクラムを組むようになる。ところが先週、「誰ひとり、不要な人などいない」と言っていた宇多津が病没した。
精神的支柱を失った男たちの「人生のトライ」はいかに?