「レザボア・ドッグス」拷問と謎解きが交差する“任侠映画”
主役のホワイトは仁義を貫く男。オレンジの負傷を自分の不手際のせいだと痛感し、彼を身をもってかばう。日本のヤクザ映画に傾倒するタランティーノらしい人物造形だ。土壇場で潜入捜査官が自分の正体をホワイトに明かしたのは宗教上の告白かもしれないが、信義による魂の叫びと考えたほうがしっくりくる。命を賭して友情に応えた。任侠映画に通じるものがある。
本作はH・カイテルにとっても記念すべき作品だ。M・スコセッシ監督の「ミーン・ストリート」(72年)で主役を演じながらパッとしなかった中年役者が、24歳下の新人監督によってスターの道を歩き始めた。M・マドセンとT・ロスも本作で実力派俳優の仲間入りを果たした。タランティーノの型破りな才能が男どもを成功のオアシスに引っ張って行ったわけだ。
ちなみにタランティーノは本作を撮る前、ロス郊外のマンハッタンビーチにあるレンタルビデオ店で働いていた。週給200ドルだった。 (森田健司)