元力士・大至さんは見た 曙の一升瓶“片手5秒”の豪快飲み
父は取組を日立からよく見に来てくれました。寿司屋のカウンターに連れてってあげると僕を隣にして鼻高々。うれしそうに飲んでいましたね。いい相撲で勝った時なんかはご機嫌で、両国や常連だった秋葉原の焼き鳥屋で飲んで、周りにもおごったりしていたそうです。ある時、飲んだ後、上野から常磐線で日立に帰ろうとして、秋葉原から上野まで行こうとしたのに寝ちゃって、気が付いたら大宮。折り返したら今度は川崎……。電車がなくなって川崎の知り合いの家に泊めてもらったそうです(笑い)。
僕と飲むとあの時の相撲はどうだった、こうだったとよく話してましたね。「オレはおまえの親方よりおまえの相撲をよく見てるから」って。ケンカになったこともありますよ。関取に上がる前のこと。「相撲甚句ばかり歌ってるから十両に上がれねぇんだ」と言われたんです。さすがに「そんなことを言うもんじゃないよ」って言い返していました。
その翌年の9月場所が終わった時、ようやく感覚を掴んだと思って「あと3場所待って。そうしたら必ず十両に上がるから」って言い切った。自分でもよく言ったなと思うけど、それからタイヤをひたすら引いて稽古して言った通り3場所で上がれた。あの時は喜んでくれましたね。