梅枝&児太郎 阿古屋で名乗り出た“歌舞伎座の立女形”の道
調べたわけではないが、今月の歌舞伎座・夜の部は出演者数の最少記録ではないだろうか。3演目合わせて7人しか出ない。それでいて、物足りないとは感じない。
今月は昼・夜とも玉三郎スクールの発表会といえる内容。彼がこの数年、目をかけている若手が大役を任されているのだ。つまり芸の継承である。
昼の部「於染久松色読販」は壱太郎が早変わりで7役を演じ、玉三郎は「監修」として名を出す。いまひとつ。
「幸助餅」は他愛ない人情劇で、松竹新喜劇みたいだと思ったら、本当に原作は松竹新喜劇だった。話の展開は読めてしまい驚きはないが、松也と中車(香川照之)が歌舞伎らしく見せている。中車は夜の松緑との「あんまと泥棒」も怪演。こういう役は彼しかできないと思わせるほど、歌舞伎に欠かせないひとりとなった。
夜の部は「壇浦兜軍記」で、主人公の阿古屋を玉三郎、梅枝、児太郎が日替わりで演じる。トリプルキャストだ。玉三郎としては自分の負担を軽くし、なおかつ若手を育成するという一石二鳥。松竹としても熱心な客は二度、三度と足を運ぶので、損はない。