「芸能界に戻ろう!」それは辞める時より大きな決断だった
インタビューは、されることには慣れていたけれども、するとなるとこれがまた難しい。業種が違うと業界用語からしてちんぷんかんぷんだ。一般社会経験となると、高校時代にアルバイトした不二家しかなかった私には「お世話になります」という挨拶から覚えていかなければならない。もちろん大変だったけど、とても勉強にはなった。でも、それ以上は広がらない。
やがて、物書きのオファーはというと暴露本ばかりに。アイドル時代の話はまだ笑って話せるほど時間が経っておらず、時期ではなかった。物書きでは食っていけない。世間が、出版社が求めるものは元アイドルの新田恵利なのだ。
仕事がない。当然ながら生活も、心も、行き詰まった。食べていけなくなってしまう。
――芸能界に戻ろう!
それは辞める時より大きな決断だった。皆さんに楽しんでもらう仕事は嫌いじゃないのだし、なにより生活のため。選択肢があるだけ幸せと思った。
出戻ったばかりの頃はスタジオでの仕事が怖かった。今思えば誰も私のことなど、大して気にしてないのに、萎縮してしまい、居心地が悪い。だから旅番組のロケと舞台しかやらなかった。週に1度の番組に、多い時は月に3本も出演していた。それでも、復帰したことはなかなか広まらず、世の中では引退したままだった。