ショーケンの破天荒さを抜くことができる若手俳優はいない
我ら中学生の前に初登場したのは、1968年のザ・テンプターズのボーカルでロン毛の不良面だ。「エメラルドの伝説」や「神様お願い!」は最高にイカしていた。Rストーンズばりの歌いっぷり、京都のホール(今はクラブ)出演時は、女子たちが熱狂のあまり、白目をむいて口から泡を吹いて失神した。我ら昭和の青春っ子は、今でも「遠い日のぉ~君の幻を~追いかけてもぉむなしーい」と歌詞を暗記していて絶叫する。タイガースの品の良さより、哀愁漂う不良性が好きだった。バンド活動後は映画俳優となって、74年に「青春の蹉跌」でキネ旬主演男優賞。「太陽にほえろ!」でも走り回っていたが、どこから見ても刑事役に見えず、ひとり浮いているのがまた頼もしくて良かった。78年のドラマシリーズ「死人狩り」の刑事役では演技も堂に入ってカッコ良かった。プー太郎同然の我らは毎週土曜の夜、欠かさずに見た。柳ジョージの歌う「雨に泣いている」が切なく胸を打った。あの頃はこんな鋭角なリアル刑事物が東映の鬼才工藤栄一や、大映映画のエース田中徳三の演出手腕により異彩を放っていた。
映画もドラマも確実に昭和時代の方が優れていた。役者の演技や現場の作り方に熱がこもっていた。我ら売れないピンク監督モドキは、どうしたらそんな場所に上昇できるのかと底辺で苦悶していた。ショーケンと相まみえることはなかったのが心残りだ。今、彼の破天荒さを抜く若い俳優はいそうにない。