正月こそ落語!三遊亭鬼丸が教える「正月初席」徹底ガイド
さてお正月といえば寄席! テレビでも演芸番組が放送され、笑点以外で落語家を見る機会が増える時期です。ですがテレビ中継だけじゃあもったいない。日本に生まれた日本人なら(日本語堪能なら外国人も歓迎)、日本の正月に落語に触れてみてはいかがでしょうか。そこで日刊ゲンダイ読者に私、三遊亭鬼丸が寄席のご案内をさせていただきます!
寄席は都内に5軒。落語協会と落語芸術協会が担当してます。1月1~10日を「正月初席」と呼び、所属芸人が必ずどこかの寄席に出演する顔見せ興行になってます。私は落語協会所属なので多少の身びいきはご愛嬌ということで、まずは落語協会担当の寄席から。それから芸人の名前がたくさん出てくるのに全部「師匠」って付けてくと字数がもったいないので敬称略は先輩の皆さまご勘弁を。
1部のトリは落語協会会長・柳亭市馬
【上野鈴本演芸場】
11時~、14時10分~、17時30分~の3部構成で、それぞれの部ごとに入れ替え制。1人の持ち時間は10分と長め。唯一前売り券を発売してます。着席が基本なのでゆっくり見るならここ。出てくる芸人も始まりから終わりまでトリ(主任)を取れる芸人しか出さない厳選ぶり。1部のトリは落語協会会長の柳亭市馬、2部は古今亭のエース古今亭菊之丞、3部は師匠で人間国宝小三治の後継者、柳家三三が主任です。6日以降は2部制になるけど出演芸人はそのままで、平日になれば席にも余裕があるはず。なので平日でも大丈夫な方には6日以降をオススメします。湯島天神や寛永寺の初詣とあわせてぜひ。
木久扇、小朝、正蔵、さん喬が揃い踏み
【浅草演芸ホール】
お正月といえば、なんかわからないけど浅草ですよ。街の持ってる雰囲気が日本人のDNAに合うんですかね。雷門くぐって仲見世通って浅草寺でお参りして左に抜けて伝法院通りを歩けば目の前には浅草演芸ホールが。4部構成で入れ替えなし。朝9時から夜9時まで、次から次へと芸人が出てきます。持ち時間は1人6~7分と短め。1部のトリはスーパースターの林家木久扇。ご存じ木久蔵ラーメンの販売もあります。2部は超人気者の春風亭小朝。3部は落語協会副会長の林家正蔵。4部は江戸落語の重鎮、柳家さん喬。まさに寄席らしい明るく楽しい雰囲気を味わえるのがここです。普段あまりお目にかかれないレア芸人を見るチャンスでもあります。
さらにここで穴場なのが演芸ホールの上にある東洋館。開演は朝の9時30分。普段は漫才中心の公演ですが1~5日は東洋館でも落語をやってます。
3部制で1部のトリが木久扇、2部は元祖古典爆笑派の柳家権太楼、3部は時代の牽引者、柳家喬太郎。ここで待ってれば下の演芸ホールから人気者は必ず上の東洋館に上がってくるんです。持ち時間も1人10分と長め。しかも18時の終演後は下に行って演芸ホールで引き続き演芸を楽しむこともできるんですよ。
2部には三遊亭円楽が特別出演
さてここからは昇太、ナイツ、松之丞といった人気者を擁する落語芸術協会が受け持つ寄席のご紹介。
【新宿末広亭】
新宿3丁目のなかに突如タイムスリップしたかのような建物。正面には所狭しと置かれた芸人の名前の入った招木、中へ入れば映画やテレビで見る寄席の空間そのもの。そりゃそうでしょう、だいたいこの末広亭をモデルに寄席のセットをつくってますからね。1階の両脇と2階は椅子席ではなく桟敷席、そう畳の上です。ですから臭くない靴下でお出かけください。それぞれ11時、15時、19時開演の3部制。1~5日は1部終演後は入れ替えあり。芸術協会って真打ちだけではなく二つ目も初席に出られるので、若手のお気に入りを見つけるのもいいかもしれません。あと2部には三遊亭円楽の特別出演もありますよ。
都内最小、芸人がとにかく近い
【池袋演芸場】
定員100人という都内では最小の寄席。そのため芸人がとにかく近いですよ。3部制ですが入れ替えはありません。2部のトリは三遊亭小遊三。あと入場料が他より安い3000円。
【国立演芸場】
ここは落語協会と芸術協会の芸人を一緒に見られるんです。しかも人気者、実力者が勢揃いの新春国立名人会と銘打って2日から7日までと変則的な公演ですが全席指定だったり鏡開きがあったり。持ち時間は15~20分で通常の寄席スタイル。しっかり腰を据えて落語を見るならここですね。
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ということで5軒を紹介してきましたが、落語を見たことがない超初心者にとってはわかりやすい漫談や小噺が多い初席はめちゃくちゃオススメなんですよね。あと漫才、奇術、曲芸、紙切りなどの色物、さらに初席ならではの獅子舞や松づくしといった芸も楽しいですよ。お正月のお楽しみのひとつに寄席はどうでしょうか。毎年恒例の楽しみになるかもしれませんよ。
■鬼丸の出演予定
●上野鈴本演芸場 〈1部〉1、3、4日
●東洋館 〈1部〉1~5日