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平野悠「ロフト」創業者

1944年8月10日、東京都生まれ。71年の「烏山ロフト」を皮切りに西荻、荻窪、下北沢、新宿にロフトをオープン。95年に世界初のトークライブ「ロフトプラスワン」を創設した。6月、ピースボート世界一周航海で経験した「身も心も焦がすような恋」(平野氏)を描いた「セルロイドの海」(世界書院)を刊行。作家デビューを果たした。

あまりの音量に隣の魚屋が出刃包丁片手に怒鳴り込んできた

公開日: 更新日:

 京王線・千歳烏山で始まったロフトは1973年、JR中央線の西荻窪駅近くに15坪のライブ空間をオープンさせた。当時は“三寺文化”(高円寺、吉祥寺、国分寺)と呼ばれるカルチャーがあって音楽、芝居、映画などの情報発信基地でもあった。高円寺と吉祥寺の間で<西荻窪ロフト>を始めたわけだが、ロクな防音設備もなく、ライブ空間とは何か? よく分かっていなかった。

 頭脳警察や裸のラリーズ、はちみつぱいの鈴木慶一、山下洋輔トリオらがオープニングライブに登場した。近隣の苦情は凄く、その後はフォーク中心のスケジュールを組むしかなかった。

 山下洋輔さんはピアノをヒジで叩くように弾いていた。ペダルを折ったこともある。ある日のライブでは、あまりの音量に隣の魚屋のオヤジが出刃包丁を片手に「うるせぇ~!」と怒鳴り込んできたこともあった。

 吉祥寺郊外に巣くっていた南正人、高田渡、友部正人、三上寛遠藤賢司、シバらフォーク村の住人たちは食えない時代を過ごしていたから、演奏の場が生まれたことをもの凄く喜んでくれた。

 かの吟遊詩人・高田渡さんは酒豪で知られ、ライブ中も酒を飲まないと歌えない。満員のステージでギターを持ったままで寝てしまい、ピクリとも動かない。それでもじっと待つ観客。音響係だった私がステージに行って「おい、渡……」と肩を叩いたら嘔吐物を辺り一面に吐き、ど~んと前のめりに倒れたことがあった。南正人さんは歌い出したら止まらない。1曲に1時間もかけて演奏することもあった。

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