「怪演女優」松本まりかは21年前から才能を開花させていた
■東京のど真ん中で育った「非主流」
松本まりかが「なかなか見つからなかった」のは、「東京の少女」だったことが理由のひとつにあるのではと思う。
彼女が女優の世界に入った2000年代以降、日本映画やドラマに素朴なヒロイン像を描く作品が増え、地方出身の女優が求められるようになった。その流れは今も続き、広瀬すず(静岡)・浜辺美波(石川)・上白石萌音(鹿児島)らの地方出身女優が主演級に成長している。
東京生まれの主演級女優も少なくないが、その多くは三多摩地区と呼ばれる都下や下町の出身者だ。それに対して、松本まりかは東京のど真ん中で育った。
地方出身女優が素朴で可憐な桜の花だとすると、松本は紫色のクレマチスの花のように大人びていた。彼女の「非主流」の雰囲気にハマる役柄は、やや少なかった。
しかし、30代になると、もはや出身地は関係ない。彼女が得意とする魔性の女を演じるにあたっては、素朴なタイプの主演女優と並ぶと対比にもなるし、都会的な存在感がむしろプラスに働いている。
2021年は、松本まりかの真価が問われるだろう。「怪演女優」は、彼女のゴール地点ではない。幅広いタイプの女性を演じる主演級女優に飛躍することを期待したい。