五木ひろしの光と影<16>「よこはま・たそがれ」誕生秘話…演歌ではなくアメリカンポップス
「この曲はね、今でこそ演歌に数えられているけど、原形は実はそうじゃない。アメリカンポップスなの。ポップスのイメージに乗せて作った。洋子ちゃんのリクエスト“今までにない曲”になったっていう満足感があったよね」
「よこはま・たそがれ」はこうして完成した。
山口洋子が三谷謙のためにやったことはそれだけではなかった。所属するプロダクションも決めてしまおうとした。芸能人にとって所属事務所は重要な問題である。規模の大小、実力の有無で芸能活動の何割かは決まってしまうと言っても言い過ぎではないだろう。このとき「姫」を経営していた山口洋子なら、どこのプロダクションでも紹介できたはずだ。「姫」には渡辺プロダクション社長の渡辺晋も、ホリプロダクション社長の堀威夫も常連顧客として顔を見せていたからだ。そうでなくても高視聴率番組の「全日本歌謡選手権」に出場して、復活劇で話題を集めていた三谷謙なら、どのプロダクションにとっても欲しい人材だったかもしれない。
しかし、山口洋子に、そのつもりはなかった。「自分で三谷謙を手掛けたい」という思いがあったのだ。ナベプロやホリプロに所属させては、自分自身が関わることはできなくなる。