五木ひろしの光と影<17>他の審査員の目に留まっては横取りされてしまう
「10週勝ち抜く前から洋子ちゃんは、三谷謙のコンセプトを練っていた。普通じゃないよね(笑い)。『こういう楽曲』で『こういう詞』で『こういう衣装』って具合に全部。彼女の理想は、『今まで、どこにもいなかった歌手にする』ってこと。となると、自分でプロデュースするしかない。つまり、大手の事務所に紹介する気は、最初からなかったと思う」(平尾昌晃)
かといって、実力のないプロダクションに預けていいとも思えない。そうなれば三谷謙の再デビュー計画は早い段階で頓挫するだろう。では、どうすればいいか。
そのとき、山口洋子の脳裏に一人の男の姿が浮かんだ。
「あの男になら懸けていいかもしれない」
洋子は膝を打った。 =つづく