<110>早貴被告の自宅マンションの家宅捜索は7時間に及んだ
私が東京駅に着いたのは午後3時前だった。
「お疲れさまでした」
「おお、悪いねえ」
東京駅の八重洲口で後輩記者のMクンが人懐っこい顔で車のハンドルを握っていた。大阪で記者活動をしていた彼は半年前に東京に居を移して講談社「フライデー」の専属記者になっていた。
「悪いけれど、江戸川区に行ってくれよ」
助手席に腰掛けた私は住所を伝えて、Mクンはそれをナビに入れた。怒涛の1週間でやっと東京に戻ってきたが、精神的にも体力的にもいっぱいいっぱいの状況だった。
「大丈夫ですか?」
私の顔色が悪いのを心配してくれる。
「少し無理をし過ぎたようだ。何しろこの1週間は睡眠時間が毎日2、3時間しかなかったから」
事件後に私の携帯電話に登録していない着信がたくさんあった。複数のテレビのワイドショーからであり、新聞社や週刊誌の記者からであったようだ。