五木ひろしの光と影<28>レコ大をめぐるナベプロvs野口プロの熾烈な戦いは「文字通り戦争」
社内において「やり手の宣伝マン」として認められていた中邑も、当初は五木ひろしに歌わせる大賞候補曲には、7月にリリースした「ふるさと」が無難だと考えていたという。しかし10月20日に「夜空」がリリースされると「もしかしたらいけるかも」と思うようになった。
「電撃戦でいけるかもしれないって思ったんです。短期決戦ですね。というのも、この年の大本命はジュリー(沢田研二)。それは誰もが知っている。曲も売れてました。ただね、一年を通してのロングランって、それはそれで大変なものなんです。息切れしないとも限りませんから。ジュリーの所属レコード会社はポリドール(現・ユニバーサルミュージック)。当時のポリドールの宣伝部はお人よしの人ばかり。それでいて事務所はナベプロ。巨大戦艦ではあるんだけど、機動力はない。話がスムーズにいかない。あそこは社長がOKしないと決まるものも決まらないんです。つまりね、必ずしもいいプロモーションが出来ているようには見えなかったんです」
対照的に野口修は、五木ひろしのスケジュール帳を中邑に渡してこう言った。