ハチミツ二郎さんが告白 コロナ感染から1年以上経った今も「手のしびれ、倦怠感が…」

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ハチミツ二郎さん(東京ダイナマイト)

 新型コロナウイルスが他の感染症と異なる点は、コロナ自体の症状が軽症または無症状であっても、後遺症のさまざまな症状に苦しむ人が結構な割合でいることだ。「ロングコビット」と言われ、免疫の仕組みが機能不全に陥り、自分の体を攻撃してしまう「自己免疫反応」がかなりの部分を占めるのではないかとの指摘もあるが、はっきりしたことは分かっていない。相談者の年代は多岐にわたっており、東京都病院経営本部(都立・公社病院「コロナ後遺症相談窓口」相談状況/2021年5月末時点)のデータによると、相談者のうち63%が40代以下で、陽性判明から相談日までの経過日数は1カ月未満から半年未満が多数を占める。感染判明から1年が経過したハチミツ二郎さんも、後遺症とみられる症状にいまも苦しんでいる。

 ◇  ◇  ◇

 ──国立国際医療研究センターによれば、感染の半年後でも4人に1人に後遺症とみられる症状があり、約10%に1年後でも症状が続いているとのことです。現在の体調はいかがでしょうか?

 良くはないですね。左手のしびれは24時間ありますし、倦怠感も続いています。コロナの感染拡大で「東京ダイナマイト」としての活動が以前ほどではなくなったので、なんとか仕事ができているのですが、コロナ前のようなスケジュールに戻ると、どうなるか分かりません。実は僕、芸人の傍ら、クラウドファンディングを通して知り合った社長に誘われ、2020年4月からIT企業の「ソノリテ」で正社員として働いているんです。入社してすぐに緊急事態宣言が発令され、テレワークになったので、こちらも後遺症があっても続けられているようなものです。

 ──後遺症かな、という症状を自覚し始めたのはいつぐらいですか?

 コロナで入院していた時からです。2020年12月14日に発熱し、パルスオキシメーターで体内酸素数が救急車を呼ばないといけないレベルの88にまで下がり、即入院となりました。「PCR抗原検査、陽性」と言われて以降はまったく記憶になく、後で聞くと、8日間ずっと眠っていたそうです。22日に集中治療室で目が覚めてから、気がついたら左手の手首より先に、正座した時のようなしびれが出ていました。動かすのも思うようにいかず、握力も低下してしまっているんです。爪切りを押す握力がないから、右手の爪を切れない。今は動くようになったけど、握力は戻っていませんし、しびれも消えない。主治医に神経の薬を出してもらいましたが、効いていません。

■医師は「後遺症ではない」の一点張り

 ──入院中、後遺症について担当医に話したのでしょうか?

 もちろん言いました。退院間際まで訴えていましたが、先生たちは「手のしびれはコロナとは関係ない」の一点張りです。コロナの専門医がいないんです。僕が入院していた病院では、循環器や内科などの医師が順番に担当し、担当医がコロコロ代わる。どの先生も「そのうち(しびれが)取れるでしょう」という返事で、「言っても仕方がない」「答えが出ないんだな」と思うようになりました。感染後の手足のしびれについては、報道でも体験談として聞きますし、やっぱり後遺症なんじゃないかなと思いますけど。もしこれが後遺症じゃないとして、今も続くこのしびれは一体なんなんでしょうか?

 ──東京都福祉保健局が出している後遺症に関するリーフレットによると、後遺症相談窓口に寄せられた症状で多いのは、嗅覚異常、倦怠感、味覚異常、発熱・微熱、呼吸困難感、咳などでした。

 僕の場合、嗅覚異常や味覚異常は最初から全くありません。一番強いのは、倦怠感です。それに、ちょっと動くと息が切れる。座ったり、壁に手をついたりするとすぐに治まるんですが、動き出すとまた息が切れる。ひどい時は、10分間の立ったままの漫才もできないほどでした。あとは、運動をしていない場所の筋肉痛です。運動をしていないのに、腕が学生時代の部活後の筋肉痛のようになるんです。

治らないと覚悟を決めて付き合っていくしかない

 ──症状の程度としては、ずっと変わらずですか?

 コロナで退院したのが21年1月15日です。左手の24時間続くしびれ、倦怠感、息切れ、筋肉痛などがあり、暑くなってきた頃から程度がひどくなってきました。ピークは夏くらいでしたね。その頃と比べると、倦怠感や息切れの程度は少し軽くなってきています。じゃあ安心か、このまま良くなると思っているのか、というと、それは違います。暑くなるにつれ徐々に後遺症の症状が悪化していき、それが軽減してきたということは、また同じようにピークが来るかもしれない。暑くなったら、あのひどい息切れが起こるかもしれない。そもそもしびれや倦怠感は消えたわけではありませんし。

 ──後遺症に関しては確立された治療法がありません。ただ、漢方薬や必須アミノ酸の処方、慢性心不全などに行われる和温療法、耳鼻科で行う上咽頭擦過療法などさまざまな治療法が行われていると聞きます。何か治療を受けているのでしょうか?

 過去に急性心不全を起こしており、血糖値も高いので、主治医がいるんですが、後遺症でどこか医療機関を受診しているかというと、どこにもかかっていません。漢方薬などの治療も受けていません。後遺症に関して相談窓口を設けている医療機関はいくつかあることは知っています。しかし実質、後遺症に確実に効く薬があるわけでもなく、確立された治療法もない。先ほども話したように、入院していた病院でも、左手のしびれについては「コロナとは関係ない」と言われました。病院に行けば話は聞いてくれるでしょうけど、どうにもならない。それは、自分が身をもって知っています。だから今後も、後遺症でどこか医療機関にかかる、何か薬を始める、ということはないと思います。

 ──周囲にも悩む方がいるそうですが……。

 知り合いの会社に顔を出した時、20代前半の女性がお茶を出してくれたんです。その知り合いから「彼女も後遺症で息切れがひどいんですよ」と聞きました。コロナ自体は無症状だったそうですが、後遺症がキツくて、そんなに大きなフロアじゃないのに、端の席から端の席までお茶を運ぶだけで息が切れるそうです。また別の知人は、(息切れで速く歩けないので)青信号に変わってすぐじゃないと通りの向こうまで渡り切る自信がないと。僕も夏の頃はそうでしたね。

 ──今後、後遺症の治療が登場するなど、どうお考えですか?

 以前、アメリカの友達に「ワクチンを2回打ったら後遺症が消える」という説を聞いたことがあるんです。そういう報道は日本ではされてなく、半信半疑でしたけど、ワクチンを2回打った今も、手のしびれは全く取れていない。漢方とかで後遺症が治るとも全く思っていません。後遺症のことは医師だって、本当に何も分からないんです。我慢というか、後遺症とはもう付き合っていくしかない。薬とか対策とか治るかもしれないとか期待すると、そうじゃない時のショックが大きい。人によっては自殺につながるかもしれません。治らないだろうと覚悟を決めて付き合っていくしかない。

 ──同じく後遺症を抱えている人へメッセージをお願いします。

 僕が言えるのは、後遺症がある人は一緒に頑張っていきましょう、僕も(自ら)死なないから、あなたも死なないでください、ということです。そして、健康な人へ。後遺症は、不調があっても外から見た限りでは全く分かりません。しかし、後遺症を抱えてさまざまな症状に苦しんでいる人がいる。それを知って理解を示してほしいと思っています。

(聞き手=和田真知子/日刊ゲンダイ)

▽ハチミツ二郎(はちみつ・じろう) 1974年、岡山県倉敷市生まれ。高校卒業後、東京NSCを経て90年代中ごろに曽根卍(そねまんじ)とお笑いコンビ「東京ダイナマイト」を結成。その後解散するが、2001年に松田大輔と現在の「東京ダイナマイト」を再結成した。ツッコミ担当。飲食店経営やプロレスラーとしても活動し、20年4月にはIT関連企業「ソノリテ」に入社。芸人と会社員の「二足のわらじ」を履いている。

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